文章番号:40018

我が国の取組
3.内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会中間報告(厚生省)
 
内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会中間報告(厚生省)の概要及びビスフェノールAに関係する部分の抜すいです。
全文は厚生省のホームページをご覧ください。
平成10年11月19日 

1.検討経過

内分泌かく乱化学物質問題の把握と今後の取り組みについて検討するため、平成10年4月に厚生省生活衛生局長のもとに「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会(座長:伊東信行 名古屋市立大学学長)」が設置された。同検討会では、人の健康への影響に関するレビュー、国際機関や諸外国の担当者等を招いてそれら機関等における本問題に対する取り組み状況の紹介を行うなど、計6回の審議が重ねられ、このほど中間報告がまとめられた。

2.報告書の概要

本報告書は「はじめに」、「内分泌かく乱化学物質を考える」、「内分泌かく乱化学物質問題を解決するために」、「おわりに」の4項目と「付録」とから構成されている。

(1) はじめに
   
  近年、一部の化学物質が極微量で内分泌かく乱作用を引き起こし、人の健康に影響を与えるおそれがあるとの指摘があること、内分泌かく乱化学物質問題は現時点では科学的に未解明な点が多く残されているため、緊急性の高いものから段階的な計画を立てて対策を進めていくことが必要等、内分泌かく乱化学物質問題の背景と問題の所在を示し、報告書がとりまとめられるにいたった経緯が示されている。
   
(2) 内分泌かく乱化学物質を考える
   
 

内分泌かく乱化学物質の人への健康影響を理解するために、人体におけるホルモンの作用機序等を詳述するとともに、本報告書で取り扱う内分泌かく乱化学物質を、

「内分泌系の機能に変化を与え、それによって個体やその子孫あるいは集団(一部の亜集団)に有害な影響を引き起こす外因性の化学物質又は混合物(世界保健機関・国際化学物質安全性計画[WHO/IPCS])」

と定義している。

ここで定義された内分泌かく乱化学物質について、ホルモン受容体への作用機序を例にとり、可能性が指摘されている作用メカニズムを示すとともに、国内外の文献報告等に基づき、子宮がん、子宮内膜症や乳がん等の女性生殖器系及び乳腺への影響、精子数の低下、前立腺がん、精巣がんや尿道下裂等の男性生殖系への影響、甲状腺系への影響等の人への健康影響に関するデータが評価され、以下のように現時点での科学的な評価が示されている。

1) 内分泌系への薬理作用を期待して使用されたDESのような例を除き、内分泌かく乱化学物質が与え得る人への健康影響について確たる因果関係を示す報告は見られない。
2) 個々の物質の正確なリスク評価や暴露評価がなされれば、日常的な暴露レベルに対してはさしあたり必要な対応を取り得るものと考えられる。

ただし、
  (1) 胎生期などホルモン制御のかく乱を生じやすい状態がないこと。
  (2) 複数の化学物質による予想外の相乗効果がないこと。
  (3) 低用量での反応性に未知の反応形態がないこと。
が問題解決のための前提条件とされている。

   
(3) 内分泌かく乱化学物質問題を解決するために
   
  現時点の国内外における内分泌かく乱化学物質対策の現状を紹介し、問題解決のための対策として化学物質の安全性の考え方、情報処理・情報提供システムの整備、国際協力の推進、統合的な調査研究の推進等基本方針を示すとともに人の健康を確保するための具体的な調査研究内容について、(1)データが不十分なために必要な調査研究が期待されている課題、と(2)先端的な科学的研究の推進によって解決が期待される部分に分けてとりまとめている。
   
(4) おわりに
   
  報告書のまとめとして内分泌かく乱化学物質問題の解決のための対策を実施するに当たって念頭に置く必要がある3つの事項が示されている。

1) 内分泌かく乱化学物質問題には、多くの検討すべき問題が存在していること。
2) 内分泌かく乱化学物質は、国境を越えた問題であること。
3) 内分泌かく乱化学物質問題は、世代を超えた問題になりうること。

   
(5) 付録
   
 

食品用のプラスチック容器の原材料として使用されている以下の物質について、これまでの知見をもとに検討された。
内分泌かく乱化学物質の問題は、未解明な点が多いため、引き続き調査研究を推進していくことが重要であるが、これら樹脂については人の健康に重大な影響が生じるという科学的知見は得られておらず、現時点で直ちに使用禁止等の措置を講じる必要はないものと考えられる、と結論されている。

1) ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールA)
ビスフェノールAに関して、3で本文抜すい
2) ポリスチレン樹脂(スチレンモノマー、ダイマー、トリマー)
3) ポリ塩化ビニル樹脂(フタル酸エステル)


3.ビスフェノールAに関する部分の抜すい

(3) 現時点でのまとめ
   
  ビスフェノールAは、試験管内においては、エストラジオール(E2)と比較すると、そのおよそ10-5〜10-4のエストロゲン受容体との結合能を持っている。

しかしながら、試験管内の試験は、生体内においても同様の作用をもつ可能性を示唆することになるが、生体内では、代謝、排泄等の過程、内分泌のフィードバック作用、血液中の成分の影響など複数の要因が重なるため、生体内の試験を実施した上で、実際の生体内での影響を評価することになる。

生体内の試験としては、前立腺重量に関する試験、発がん性試験などが実施されているが、(1)前立腺重量は通常の評価項目でなく、その重量増加の機序も不明であること、(2)発がん性試験は、1,000ppm以上、二世代繁殖試験は100ppm以上の比較的高用量で実施されていることから、実際の暴露量のレベルでビスフェノールAによる生体内への毒性を示すデータは得られていない。なお、米国環境保護庁は、ビスフェノールAのRfD(一日摂取許容量(ADI)に相当)を0.05mg/kg/dayと設定している。

以上のように、これまでのところポリカーボネートから溶出するレベルのビスフェノールAが人の健康に重大な影響を与えるという科学的知見は得られておらず、現時点において使用禁止等の措置を講ずる必要はないものと考えられる。ただし、内分泌かく乱化学物質の問題は、新たな課題であり、微量であっても作用を引き起こすという指摘、内分泌系のフィードバックシステムが確立している成人に対しては無毒性であっても、内分泌系が未発達の乳児には影響を与えるとの指摘があるため、引き続き、二世代繁殖試験などの調査研究を行っていくことが必要である。
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