文章番号:40005

Q&A
内分泌かく乱物質ってなんですか?
最近「内分泌かく乱物質」や「環境ホルモン」という言葉を聞いたり,目にするようになりました。テレビや雑誌,新聞等で取り上げられ,特集なども組まれたりしていますが,多くの人が様々な疑問等を抱いているのが現状ではないでしょうか。
ここでは,より分かりやすくそれらについて説明するようにしました。

(1) 内分泌かく乱物質が注目されるようになったのはなぜですか。
   
  1996年,アメリカのシーア・コルボーン博士らの出版した「Our Stolen Future」により注目されるようになりました。この本はゴア米国副大統領が序文を記したことも手伝ってマスメディアに取り上げられ,一躍クローズアップされました。
翌年,日本でも「奪われし未来」として翻訳版が出版されるとともに,NHKの科学番組で特集が組まれ,人々に知られるようになりました。
「Our Stolen Future(奪われし未来)」は,環境中に放出された化学物質が,多様なホルモン作用に基づいて複雑な内分泌系の機能(生体の恒常性(ホメオスタシス),生殖,発生,行動等)を微量でかく乱させ,野生生物やヒトへの危害を及ぼす可能性を指摘しています。
   
(2) 内分泌かく乱物質は何が問題なのですか。
   
  内分泌かく乱物質は,本来その生体内で営まれている正常なホルモンの作用に影響を与え,その結果,生体の内分泌系をかく乱し,特に胎児や乳児など器官形成の活発な時に生体に望ましくない影響を与えることが問題とされています。
なお,内分泌とは,特定の器官からホルモンが血液中に分泌されることをいいます。そして,内分泌を行う器官を内分泌腺とよびます。
内分泌の英語名はエンドクリン(endocrine)で、内分泌かく乱物質問題はエンドクリン問題ともよばれています。
   
(3) 内分泌かく乱物質の定義は何ですか。
   
  内分泌かく乱物質の代表的な定義は次のとおりです。

世界保健機関・国際化学物質安全性計画(WHO/IPCS)
内分泌の機能に変化を与え,それによって個体やその子孫あるいは集団(一部の亜集団)に有害な影響を引き起こす外因性の化学物質あるいは混合物

環境庁
動物の生体内に取り込まれた場合に,本来,その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性の物質
   
(4) 内分泌かく乱物質と環境ホルモンとは違いがあるのですか。
   
  内分泌かく乱物質と環境ホルモンは同じものを意味しています。
日本では,広く知られるきっかけとなったNHKの特集番組で使用されたことと馴染みやすさから,一般には環境ホルモンとして知られています。

平成9年8月の学術審議会特定研究領域推進分科会バイオサイエンス部会から「環境ホルモン」の用語の使用について、
明確な定義のあるホルモン(内分泌)という言葉をこれと違った概念的な用語として用いることは不適切であること、また、そのような用語の使用により、生殖腺の異常や精子数の減少、発生の異常や癌の多発等の原因が未解明であるにもかかわらず、こうした異常はすべて「環境ホルモン」が原因であるかのような誤解と不安を社会に対して助長する恐れがあること、などの点を考慮すれば、作用が限定され理解しやすい「内分泌かく乱物質」を使用する方が適切であると考えております。
なお、ホルモンと類似の作用を示すことで内分泌系をかく乱する物質は、化学物質に限定すべきでないことから「内分泌かく乱化学物質」とせず「内分泌かく乱物質」としたものです。
との見解が出されています。

このホームページでは,「内分泌かく乱物質」を使用していますが,引用の部分は,原文のままの名称を用いています。

   
(5) 内分泌かく乱物質の作用メカニズムはどうなっていますか。
   
  一般にホルモンは,それぞれ特定の細胞に作用します。この細胞を標的細胞といい,標的細胞には,その細胞膜の表面または細胞質の内部に特定のホルモンとだけ結合するホルモン受容体(レセプター)が存在します。
そのため,ホルモンとホルモン受容体は,鍵(ホルモン)と鍵穴(ホルモン受容体)の関係に例えられ,合致するホルモンとホルモン受容体は決まっています。
しかし,内分泌かく乱物質はあたかも対応するホルモンと同じようにホルモン受容体と結合し,合鍵状態となって作用します。
そして,生体に対して様々な疾患や正常な器官形成を阻害することが予想されているのです。
   
(6) 内分泌かく乱物質はどのような影響を及ぼすのですか。
   
  魚類,は虫類,鳥類などの野生動物では,生殖毒性(生殖機能異常,生殖行動異常,雄の雌性化,ふ化能力の低下等)が多く報告されており,内分泌かく乱物質がその原因ではないかと疑われています。
一方,内分泌かく乱物質の人間への影響は分かっておらず,現在研究が進められています。
しかし,野生動物の調査等から生殖器や器官形成などの阻害が予想され,その影響が次世代にも及ぶのではないかと考えられています。
また,研究者によっては,微量の内分泌かく乱物質でも作用するのではないかとの指摘もありますが,現在,鋭意研究が進められているところです。
   
(7) これまでに報告されている内分泌かく乱物質にはどんなものがありますか。
   
  内分泌かく乱作用を有すると疑われる物質は,国や調査する機関によって違いはありますが,主なものとして,ポリ塩化ビフェニール類(PCB),有機塩素化合物(殺虫剤等),トリブチルスズ(船底塗料等),ビスフェノールA(樹脂の原料),フタル酸塩(プラスティックの可塑剤)等が挙げられています。
   
(8) ホルモンとは何ですか。
   
  私達の体の内にあるホルモンとは,内分泌腺とよばれる器官(視床下部,脳下垂体,甲状腺,副甲状腺,消化管,すい臓,副腎,腎臓,精巣,卵巣など)から必要に応じて微量に分泌される化学伝達物質です。(図 ヒトの主な内分泌腺
ホルモンは血液により作用すべき組織細胞(標的細胞)に運ばれます。
   
(9) ホルモンの役割は何ですか。
   
  ホルモンは,動物の発生過程での組織の分化,その成長,生殖機能の発達をうながしたり,外部環境が変化しても内部環境を一定に保つ恒常性(ホメオスタシス)を調節する役割を果たしています。
   
(10) ホルモンにはどのような種類のものがありますか。
   
  ホルモンには,成長と代謝に関係する成長ホルモン,甲状腺ホルモン,インスリン等や性に関する男性ホルモン,女性ホルモン(エストロゲン)等があります。

主なホルモンとその働き
ホルモン 内分泌腺 働 き
放出ホルモン
抑制ホルモン
視床下部 下垂体前様ホルモンの分泌を調節する。
成長ホルモン 脳下垂体 成長促進させる。
甲状腺刺激ホルモン 甲状腺の機能を促進する。
バソプレシン 腎臓での水再吸収を促進し、血圧を上昇させる。
チロキシン 甲状腺 代謝を促進する。
パラトルモン 副甲状腺 骨中カルシウムの溶出促進、カルシウムの排出抑制をする。
グルカゴン すい臓 血糖値を高くさせる。
インスリン 血糖値を低くさせる。
アドレナリン 副腎 血糖量を増加させる。
糖質コルチコイド 血糖値を高くさせる。
鉱質コルチコイド 体内の無機イオン量を調節する。
男性ホルモン 精巣 男性の二次性徴を促進する。
女性ホルモン(エストロゲン) 卵巣 女性の二次性徴を促進する。
妊娠を維持させる。

MENU 次へ