喫煙防止教育パンフレットの解説

  1. たばこの起源

    たばこはナス科のニコチアナ属の植物で、現在、世界で最も多く栽培されているのはニコチアナ・タバカムNicotiana Tabacumという学名の種である。このニコチアナ・タバカムはこれまでの研究でボリビアからアルゼンチンの国境にかけてのアンデス山中に分布する野生のニコチアナ・トメントシフォルミスとニコチアナ・シルベストリスニコの間に生まれた種であると考えられている。

    たばこは始め主に宗教的な行事に用いられていた。中央アメリカのマヤ族では神への供物としてたばこが使われており、僧が乾燥した野性のたばこの葉を火にくべて、その煙を吸っていたと言われている(写真はユカタン半島のマヤ神宮に残された喫煙の絵である)。これが次第に一般の人々にも広まり、さらに他の中南米の地域にも広がっていった。そして喫煙方法も民族の風習の違い等によってたばこを竹や動物の骨を利用して吸ったり、葉を巻いて吸ったりと変化していった。(パイプ喫煙や葉巻の起源)

  2. たばこ(喫煙習慣)の流行

    1492年にコロンブスがアメリカ大陸に到達し、原住民からたばこを貰ったことから、喫煙習慣がスペインに伝えられた。喫煙習慣はさらにスペインからヨーロッパ各地へと、特に貴族の間で広まっていった。それと同時にたばこの栽培もヨーロッパで行われるようになった。

    その後、19世紀半ばにイギリスでマッチが造られるようになったことでたばこへの点火が容易になったことや、第一次産業革命以降、紙巻たばこの大量生産が始まったことで、喫煙習慣が一般庶民にも急速に広まっていった。

  3. 日本での喫煙習慣

    たばこは1543年の鉄砲の伝来とともにポルトガル人によって伝えられたと言われている。慶長(1596~1615)の初期にはたばこの栽培は指宿・出水また長崎付近で行われており、その後次第に各地へと栽培が広がっていった。それと共に喫煙習慣も各地に伝播していった。江戸時代には「きせる」を使ってたばこを吸うことが流行したが、火災の恐れなどからしばしば喫煙禁止の令も出されている。

    明治以降、たばこ税則が定められるとともに、たばこの栽培製造販売も本格化し、それにつれて喫煙習慣も更に広がっていった。しかし年少者にも喫煙が広がりを見せ始めたことから、明治27年に「小学校での喫煙を禁ずる」との訓令が出された。

    そして明治33年(1900)に健全なる青少年の育成を目的として「未成年者喫煙禁止法」が施行され現在に至っている。

  4. たばこの健康影響についての関心

    喫煙率が上昇するにつれ、健康への影響にも関心が向けられるようになってきた。1930年代になって、肺がんの急激な増加がみられるようなったことから、大量に消費されていたたばことの関連が疑われるようになった。1939年には西ドイツのMüllerがへビースモーカーに肺がん患者が多いことを報告している。その後喫煙と肺がんとの関係(特に紙巻たばこ)についての疫学的研究が数多く行われるようになり、喫煙者が肺がんに罹り易いことが明らかになってきた。また肺がん以外にも喫煙者は口腔がん、喉頭がん、食道がん、胃がん、膀胱がんなどのがんに罹るリスクが非喫煙者に比べ高いことも明らかになってきた。

    1960年代英国王立内科学会や米国公衆衛生総監諮問委員会がそれぞれ「喫煙と健康」に関する報告書を発表したことから、世界各国でも研究が進められ、その結果冠動脈性心疾患や慢性気管支炎、肺気腫などがん以外の病気との関連も明らかになった。そしてWHO(世界保健機関)専門委員会が1975年に「喫煙とその健康に及ぼす影響」を報告したことをきっかけに、たばこ対策も積極的に講じられるようになってきた。

    日本でも1965年に全国の6府県29保健所管内の40歳以上の地域住民を対象に「喫煙と健康に関する追跡調査」が開始された。この調査でも喫煙者の方が非喫煙者に比べ喉頭がん、肺がん、口腔がん、食道がんなどの死亡率が高いことが示されている。1987年には厚生省の公衆衛生審議会が「喫煙と健康問題に関する報告書(たばこ白書)」を作成し、この報告書でたばこの有害性を明らかにしている。

  5. たばこ対策

    「喫煙による健康への影響」が明らかになるにつれ、喫煙対策もとられるようになってきた。特に世界保健機関(WHO)は1970年の総会においてたばこと健康に関する最初の決議が行われたことを契機に世界各国政府に対し積極的に喫煙規制対策をとるように勧告を行ってきた。1988年には「世界禁煙デー」も設けられた。(1988年は4月30日、1989年からは5月31日に)

    アメリカやヨーロッパの一部の国ではWHOの勧告を受け、「消費者に対する警告表示」「未成年者の喫煙禁止」「公共の場所での禁煙」「たばこ広告の禁止や規制」「たばこ税の増額」など、喫煙対策を積極的に進めてきた。その結果喫煙率やたばこ消費量が減少するなど徐々に成果が現れてきている。しかし、ヨーロッパには喫煙に対し寛容な国も多いことからEU加盟15カ国では2003年秋に、たばこの箱に警告文を掲載することを義務付けている。(黒枠で囲まれた警告文の面積は表面の30%以上、裏面の40%以上))

    日本ではたばこ包装への注意表示や「タール・ニコチン量」表示などが行われてきたが、「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう」と小さく表示されているため、警告になっていないと指摘されていた。

    2002年に「健康日本21」において、「たばこの健康への影響に関する情報の提供」、「未成年者の喫煙防止」、「受動喫煙の害を排除・減少させるための環境つくり」「禁煙希望者に対する禁煙支援」などの目標が設定されたことから、公共機関での分煙やたばこ広告の規制など、たばこ対策が今後積極的に推進されていくものと思われる。

    2003年にはWHOの総会で喫煙による健康被害の防止をめざして「たばこ規制枠組条約」が採択されている。

    多国籍たばこ企業による国境を越えた販売活動が行われているなかで、たばこ対策のための枠組条約は、たばこと健康問題の解決のためには、国境を越えた取り組みが必要であるとの観点にたっている。

    2004年に日本は世界で19番目に「たばこ規制枠組条約」批准。また、たばこ事業法改正(2003年)で具体的に健康への危険性を示すことが義務付けられたことから、たばこ包装の「注意書き」を、「肺がんの原因の1つ」「心筋梗塞の危険性を高める」「乳幼児や子ども、お年寄りの健康に悪影響を及ぼす」など、より具体的で目立つ表記に変えつつある。


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