たばこを吸えば…吸わなければ…

たばこによって損われるものは?

「たばこによって損なわれるものに何があると思うか」と尋ねると、即座に「健康」という答え。問い返すと、「がんなどの病気になって寿命が縮む」「身長が伸びなくなる」、さらには「周りから嫌われて、人間関係も崩れる」などと想像をふくらませた。事前にたばこの害を学んでいることもあり、妥当な答えである。しかし、「本当にそうか」との問い返しに黙ってしまった。たばこは健康に悪いと聞き、それをうのみにしているにすぎないのが実態である。そこで、自ら喫煙の影響を調べることを通し、認識を深めることにした。

損われるものはこんなに!

  1. 6つの追究課題

    生徒が予想した「たばこによって損われるもの」を整理すると以下の6つになった。

    <たばこによって損われるもの(予想)>

    1. 内臓(体の見えない部位)の健康状態
    2. 体格(体の見える部位の健康状態)
    3. 寿命
    4. 精神的な健康状態
    5. 妊婦・赤ちゃんの健康
    6. 人間関係

    上の6項目の中から最も興味のあることに焦点をあて、個人追究を始めた。

  2. 個人追究

    多くの生徒がインターネットを使い、参考になるホームページの情報を交換し合って必要な資料を見つけた。そして、要点を書きまとめたり、グラフや表を書き写したりすることで、自分の資料とした。こうすることで資料集めに時間はかかったが、ホームページをプリントアウトしただけで理解したつもりになってしまうことを避けることができた。

    インターネット資料、図書資料を探す以外に、アンケート調査を試みる生徒もいた。特に前述の⑥の項目の人間関係について追究していたA子は、家族の喫煙状況と、喫煙者をどう思うかという意識調査を1年生全員を対象に行った。これは身の回りの実態を知る貴重なデータとなった。一方、喫煙者の意識調査を試みた生徒は、たばこを吸う先生や身近な人にインタビューをして情報を集めた。その中で、やめたいのにやめられないという依存の問題に目が向いたり、たばこをやめるために使う禁煙グッズに関心を持ったりと、新たな追究課題を見つけた生徒もいた。

    調べ学習の資料の1つとして本パンフレットを活用した。

  3. グループ発表会

    前述の同じ項目を選んだ者同士で班を作り、個人で追究したことを発表し合い、班としての発表内容を精選した。以下が6つの班の主な発表内容である。

    <1班>「喫煙で内臓が…」

    臓器(のど、肺、心臓など)への影響を、本のカラー写真とともに紹介。またそれぞれの部位のがんの発生率を、喫煙者と非喫煙者で比較した表を提示する。「たばこを吸ってる人の肺は黒くて気持ち悪い」と感想も伝える。

    <2班>「内臓以外にも影響が…」

    喫煙によるやにで歯が黄ばむだけでなく、歯周病を招くことを伝える。歯周病の進行段階を、インターネットで見つけた写真をデジタルカメラに撮り、テレビに映して説明する。喫煙によって背が伸びなくなるかどうかは、資料が見つからず検証できなかった。

    <3班>「早死にするかも!?」

    喫煙によりがんの発生率が高まり、寿命が縮むことを指摘。たばこ1本吸うと寿命が5分30秒縮むというデータを劇に仕立てて印象付けた。さらに、たばこによって精神的な安定を得ている人は、「ニコチンが体に入っている間だけがまともな人生」と指摘し、人生が変わってしまう怖さを訴えた。

    <4班>「人格が変わる?」

    アンケート調査を基に、喫煙をやめたいと思っていても結局やめられない人がいることを紹介。たばこを吸うと「気分がすっとする」など依存症状についても触れる。また、吸い続けるうちに身体にも悪影響が現れることを説明する。

    <5班>「妊婦さんが喫煙すると…」

    妊婦の喫煙は流産や胎児の体格の低下を引き起こすことを、喫煙率ごとのグラフに示して報告。また、受動喫煙の危険についても訴え、「たばこさえ作らなきゃ、子どもにも害がないのに」と感想を伝える。

    <6班>「人間関係はどうなる?」

    アンケートの結果から、迷惑と思っていても「やめてほしい」という強い意見を持っている人が少なく、周りの人があきらめていることを指摘。それだけたばこはやめられないものであると結論付ける。そして、禁煙サポートグッズを紹介する。

  4. 保健師さんのお話

    グループ発表の後に質疑応答の時間を設け、生徒が答えられない内容については、ゲストティーチャーとしてお招きした保健師さんに説明していただいた。そのおかげで病気の症状や、症状が表れる部位が体のどこにあるかなど、十分に理解していなかった事柄を改めて知ることができた。さらに、喫煙者の肺の模型を見せてもらったり、1日1箱のたばこを1年間吸い続けると肺にコップ1杯分のタールがたまると具体的な説明を聞いたりする中で、喫煙の影響の恐ろしさを認識していったようである。

  5. 経済的損失について

    グループ発表の後、茶色に汚れた雑巾を見せた。この雑巾は職員室の喫煙室の窓を拭いたものである。これをきっかけに経済的な損失もあることを示唆した。興味を抱いた4人がインターネットで火災の出火原因を調べ、たばこが原因と見られる火災が多いことを知り、学年発表会の際には前述の6つ項目に加えて発表した。

だから、たばこはダメ!

学習のまとめとして書いた感想に、次のようなものがあった。

家族の中でお父さんがたばこを吸っていて、7月1日たばこ値上げの時にやめると言ったのに、まだやめていません。やっぱりニコチンがしつこいんだなあ…と、少しやめられない人の気持ちもわかりました。でも、自分のため、家族のためにぜひやめてほしいと心から思っています。これから時がたつにつれて、どんどん喫煙防止という言葉が増えるといいと思います。(D子)

前はたばこでがんになるというのはわかってたけど、依存になることはないと思っていたのでお父さんには(たばこをやめなよと)言わなかったけど、依存の怖さを知ってからは、お父さんにたばこやめなと言うようになった。(E子)

たばこをやめられない人の気持ちも考えられるようになったこと、また、身近な喫煙者の健康を気遣うからこそ禁煙を勧めるようになったことが、学習を通して深化したところである。今後は周りの人へ働きかけるだけでなく、生徒本人が誘われたときに断れるよう、得た知識がはたらくことを願っている。