文章番号:30169

指導の実際

3.授業の展開例

5.高等学校における展開例

意志決定「自分自身で行動を選択しよう」

1 題材設定の理由

私たちは毎日の生活の中で様々な問題や要求に対して決定を下している。しかし、それらはほとんど無意識のうちに行っているが、ときとして健康・生命・生き方にかかわる重要な場面で意志決定が必要となることがある。そのときには自分自身で責任をもって最善と思われる選択肢を決定して実行する必要がある。ここでは薬物乱用を避けるために正しい情報に基づいたより合理的な決定ができるためのスキルを理解し、練習させることをねらいとして、この題材を設定した。

2 指導のねらい
  1. 薬物乱用を避けるために合理的な意志決定をすることが重要であることを理解できるようにする。
  2. 薬物乱用にかかわる状況の中で、より健康的で合理的な意志決定ができるようにする。
3 展開
指導事項 学習活動・内容 指導・支援上の留意点
薬物乱用に関する問題状況
  1. 薬物乱用が心身の健康に及ぼす影響について確認する。
  2. 薬物乱用の増加について確認する。
  • 生徒の年齢・興味・ニーズ等発達段階を踏まえた適切な情報と科学的に信頼できる最新の情報から薬物乱用の問題について理解させる。
  • ここでは個人が問題を判断し、いくつかの選択肢の中から最善のものを選択し行動するスキルを学ぶことを知らせる。
行動選択のためのステップ
  1. 5~6名のグループをつくる。
  2. 用意された物語から一つ選ぶ。(図表8-1
  3. 意志決定のステップに関するモデルを用いて段階的に進める。(図表8-2
  • 用意した物語でなく、薬物を使用している高校生がいることを聞いたり、薬物をすすめられたりしている高校生を見たり等自ら経験した実際例を取り上げてもよい。
  • 物語を用いて意志決定のステップを適用する。
  • 本時ではステップ5までを扱う。
行動選択の決定
  1. グループで話し合った行動選択について発表する。
  • 人は重要なことをよく考えずに意志決定してしまうことがあるが、健康・生命・生き方に関する決定は、役に立つ情報を収集し、何が意志決定時に影響を与えるのかを考え、取りうる選択肢の中から、それらの結果を注意深く考えて行なう必要があることを理解させる。
  • 自ら行動を選択することで問題を解決し行動を変容させることによってセルフエスティームを高めることになることを確認させる。
  • 自ら行動を選択し決定していくことは、結果がよくなくとも、どこに問題があるかが分かり、次のよりよい意志決定に結びつくことを理解させる。
4 準備
  1. 薬物乱用の現状に関する資料、薬物乱用が原因となった事件・事故に関する資料
  2. 図表8-1:「意志決定の物語」
  3. 図表8-2:「意志決定のステップ」
    ステップ1
    自分の置かれている状態を理解しよう
    問題を明確にする。
    (一人称の形で課題を述べる)
    ステップ2
    自分のとれる可能な行動を挙げる
    問題を解決するための選択肢を挙げる
    (ブレインストーミングなどを用いる)
    ステップ3
    必要な情報を収集し分析する
    価値観や目標を考慮したり、入手すべき情報を集め、考える。
    (意志決定に影響する要因を確認する)
    ステップ4
    2で挙げた行動の結果を予測し検討する
    それぞれの行動がもたらすと思われる結果の長所・短所を予測し、好ましいと思われるものを幾つか挙げてみる。
    ステップ5
    目標を達成するために最もよいと思われる行動を選択し決定を下す
    置かれた状況や自分の能力等を考慮して最善と思うものを選択する。(自分の価値観に沿いながら、セルフエスティームの向上につながり、自分の選択に責任がもてる決定を下す)
    ステップ6
    行動する
    • 自分の決定に責任を持つ。
    • それでも結果が悪かったら自分にとって「より適した選択」をさらに考えること。
  4. 図表8-3:「ブレインストーミング」
    1. ブレインストーミングとは

      「Brain Storming(頭脳に嵐が吹く)」の名のごとく、頭の働きを活発にして、ある問題に対して、アイデアや思いつきを自由奔放に出しあう、集団思考法の一種である。

      他人の意見やアイデアから連想が起こり、一人の頭の中で考えるよりも豊かな発想で思考することができる。

    2. ブレインストーミングの4原則
      1. 自由な発想で自由に思考し、短く発言する。
      2. 出されたアイデアについて、その場で互いに良い悪いを言わない(批判しない、議論しない)。
      3. できる限り多くのアイデアを出す。
      4. 出されたアイデアの結合・変形・改善でもよい。
    3. ブレインストーミングの進め方
      1. 最初に司会と書記を各一人決める。
      2. 小グループで行なう(6~9人が適当)
      3. 時間は10~20分以内にする。
      4. あらかじめブレインストーミングであることを説明し、その4原則と扱うテーマを確認した上で進める。
    (JKYB研究会、1995)
  5. 図表8-4:「意志決定上の留意点」
    1. 意志決定したら状況が変わらないかぎり実行をためらわない。そうしないと他人の意志に左右されてしまったり、不本意な選択を強要されたりすることがある。
    2. 意志決定は、冷静なときにする。不愉快、怒り、精神不安定などの精神状態では、判断を誤ることがある。
    3. 特別な行動をしないことも一つの意志決定である。必要でないなら行動しないことも最良の選択である場合もある。
    4. 幅をもたせておくことも大切である。柔軟な対応がよい結果も生むことがある。
    5. 意志決定にあたって経験者によく相談することも大切である。
    6. 意志決定の結果に責任をもつことである。
    7. 運や偶然を期待しないことである。
    8. 完全無欠な意志決定はない。しかし意志決定のスキルを習得すれば、望ましい方向に改善できる。
    (JKYB研究会、1995 デュードブック「思春期の意志決定」を参考にした)
5 評価
  1. 薬物乱用を避けるために合理的な意志決定をすることが重要であることを理解できたか。
  2. 薬物乱用にかかわる状況の中で、より健康的で合理的な意志決定ができたか。
6 家族・地域との連携
  1. 薬物を使用しないことが生徒自身の健康安全だけでなく、地域社会の健康安全にもつながることを理解し、家族として何ができるか考え、話し合う。
  2. 意志決定のスキルについて家族に知らせ、助言をもらう。

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