文章番号:30173

指導の実際

3.授業の展開例

6.指導方法の工夫

(1)フィールドワーク

生徒が自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する方法としてフィールドワークは有効な方法の一つである。

「薬物乱用防止」に関するフィールドワークとしては、保健所、警察署、麻薬取締官事務所などの訪問が可能であろう。これらを通じて、薬物乱用を取り巻く環境を調べることができる。

保健所では、薬物乱用の健康に及ぼす影響について、警察や麻薬取締官事務所では、薬物乱用に関する事故・事犯あるいは最近の薬物乱用の実態について係員などから話を聞くことによって、教員の話とは違った印象や関心を深めることが期待できる。

(2)ブレインストーミング

ブレインストーミングは、ライフスキル学習の中心をなし、小集団活動において、ロールプレイング(後出)と並んで最もよく用いられる学習方法の一つであり、薬物乱用防止に関する指導においても有効である。

ブレインストーミングとは「脳の嵐が起こる」という意味であり、その目的は、グループ全員が協力しながら限られた時間の中で、ある課題についてできるだけ多くのアイデアや意見を出すことにある。そのため実施する際には以下のような点に留意すべきである。

ブレインストーミングの進め方はおおよそ以下のとおりである。

(JKYB研究会)

ブレインストーミングを繰り返し実施し、習熟するにつれて、グループのメンバーが互いの意見に耳を傾け、相互尊重する雰囲気が形成され、グループの連帯感が強まることも副次的効果の一つである。

(3)ディベート

ディベートとは、ある一つのテーマについて、参加者が肯定側と否定側に分かれ、一定のルールに従って、各々の主張を立証することを目的とするディスカッションの一形式である。ディベートで最も重要視されるのは証明するということであり、論理的思考力を養うために近年我が国の学校教育でも用いられるようになってきた。

ディベートの一般的進め方はおおよそ以下のとおりである。

これ以外にも様々な形式があるが、共通の原則は、(1)肯定側と否定側のメンバーの数が同数であること、(2)両チームの持ち時間が同じであること、(3)最初と最後は肯定側が話すことである。

ディベートを実施することによって得られる教育上の利点は、論理的思考力の形成だけにとどまらない。例えば、準備の段階では情報を収集し、その中から必要なものを選択することが求められ、意志決定スキルを形成するのに有効である。また、実施場面では相手の話をよく聞くことや、自分の考えを上手に聴衆に伝えることが必要となるため、コミュニケーションスキルを形成するのにも有効である。

薬物乱用防止のための指導においてディベートを用いる場合には題材の設定に注意が必要である。すなわち、肯定側と否定側の間に善と悪が明らかであるような題材設定は避けるべきである。なぜなら、例えば「覚せい剤の使用について賛成か反対か」といった場合、賛成側が優位に受けとめられる様な結果になってはならないからである。

(4)ケーススタディ注1

ケーススタディは、健康教育において有用な学習方法の一つである。すなわち、日常生活で起こりそうな架空の物語で場面を設定し、学習者がその主人公の立場に立ち、登場人物の気持ちや考えまたは行動の結果を予想したり、主人公がどのように対処(態度や行動)すべきかについて考えたり話し合う。学習者は、架空の人物について話し合うため、自分の個人的な経験を暴露したり気恥ずかしい思いをする心配が少ないことから、学習者の率直な気持ちや考えを引き出すことが容易になる。

こうした学習活動を通して、学習者の誤った社会通念の改善、心理社会的要因による影響の存在、望ましい対処の方法などについて効果的に学習することができる。多くの場合、ブレインストーミングやディスカッションなどと組み合わせて学習活動が展開される。また、ライフスキル学習を効果的に進めるために、ケーススタディをロールプレイングの学習活動の前段階に位置づけることも一つの方法である。

ケーススタディにおいては、場面設定する物語の質が何よりも重要となる。少なくとも、次の点に留意する必要がある。

(秋田健康教育研究会、1995年) 注1 我が国では通常実際の事例をもとに学習することと考えられているが、WHOや外国の例では、架空の事象を用いる場合もケーススタディと称している。ここではその例を用いている。

(5)ロールプレイング

ロールプレイング(役割演技法)とは、役割を与えて演じさせ、それを通じて問題点や解決方法を考えさせる訓練方法である。自己主張コミュニケーションスキルやストレス対処スキルなどの人間関係にかかわるスキル能力を高めるのに特に有用である。

ロールプレイングの学習活動では、クラスの生徒が相互に演者となったり観察者となったりするので、自己を客観視したり他者を理解することが可能になり、生徒は楽しく、主体的に参加できる。

ロールプレイングはこうした有益な結果をもたらすことを期待できるが、実施の仕方次第では弊害が生じる場合もある。クラスで実施するロールプレイングの効果的な運営のための留意点は、次のようである。

(JKYB、1995年)

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