文章番号:30144

我が国の取組

概要版:薬物乱用防止五か年戦略

第三次覚せい剤乱用期の一刻も早い終息に向けて総合的に対策を講ずるとともに、世界的な薬物乱用問題の解決に我が国も積極的に貢献する

1.これまでの薬物乱用防止対策と薬物乱用を取り巻く現状

薬物乱用対策推進本部は、平成10年5月、戦後第3回目の覚せい剤乱用期の早期終息を図るため、供給遮断・需要削減の両面から、国内における薬物乱用対策及び国際協力を推進することを基本目標に据えた「薬物乱用防止五か年戦略」(以下「旧五か年戦略」という。)を策定した。そこでは、この基本目標を具体化するため、「青少年対策」、「密売対策」、「水際対策・国際協力」、「再乱用防止対策」の四つの目標を掲げ、総合的な戦略の下に関係省庁が連携して一層の対策強化を図ることとし、それぞれについての現状と問題点及び対策を示してきた。

旧五か年戦略が策定された平成10年から今日までの間、新学習指導要領に基づく小学校での薬物乱用防止に関する指導や組織的犯罪処罰法や通信傍受法等の関係法令の整備等、新たな対策を講ずるとともに、中学校及び高等学校における薬物乱用防止教育の充実、麻薬特例法の積極的な活用、コントロールド・デリバリーの効果的な実施、国内外の関係機関との連携・情報交換の促進、薬物依存・中毒者の治療・社会復帰支援等、様々な対策を行ってきた。また、国際協力としては、資金協力、技術協力、国際会議の主催等を通じて国際社会においてイニシアチブを発揮してきた。

これらの戦略に基づく諸施策により、今次の乱用期の重要な課題の一つである青少年を中心とした薬物乱用の拡大については、児童生徒の薬物に対する意識が全般的に改善されつつあることがうかがわれるとともに、青少年の覚せい剤事犯検挙人員が戦略策定以降減少傾向にあるなど、一定の歯止めがかかったと認められる。しかしながら、青少年、特に中、高校生の覚せい剤事犯検挙人員は依然として高い水準にあり、また、薬物の入手可能性等の社会環境は改善されておらず、依然として厳しい情勢にある。

他方、薬物密売組織については、関係機関等が連携した取締り等により、暴力団やイラン人等外国人薬物密売組織に対し人的・資金的な面から打撃を与えたものの、依然としてこれらの組織が中核的存在となっており、また密売方法も巧妙化・潜在化の度合いを強めている。

また、この5年間で、それ以前の5年間の3倍以上の覚せい剤を押収したが、覚せい剤密輸ルートは根絶されていないことから、依然として相当量の覚せい剤が我が国に流入しているとみられる。さらに、近年では、大麻やMDMA(通称エクスタシー)等錠剤型合成麻薬の押収量が急増しており、これらの薬物の乱用がますます深刻化しているのではないかとの懸念が増大している。

一方、国際情勢については、ミャンマー、ラオスにおけるケシ栽培面積は減少しているものの、「黄金の三角地帯」周辺国(ミャンマー、タイ、ラオス、中国、カンボジア、ベトナム)における覚せい剤不正取引は増加しており、世界的な薬物乱用状況は続いている。

2.薬物乱用防止新五か年戦略の策定

以上の状況を踏まえると、現在においても依然として第三次覚せい剤乱用期が継続していると認識せざるを得ず、薬物乱用対策推進本部は、第三次覚せい剤乱用期の一刻も早い終息に向けて、ここに新たな五か年戦略(以下「新五か年戦略」という。)を策定し、関係省庁の一層緊密な連携の下、引き続き総合的に対策を講ずるとともに、併せて世界的な薬物乱用問題の解決に積極的に貢献する。

新五か年戦略の策定は、旧五か年戦略において残された課題の解決を図るとともに、近年の状況の変化や旧五か年戦略のフォローアップ結果を的確に反映し、特に次のような視点に留意する。

青少年による薬物乱用の根絶と家族に対する支援等

薬物の乱用は、その人間の精神や身体をぼろぼろにし、人間としての生活を営むことをできなくするだけでなく、場合によっては死亡することもある。未来ある青少年がこのような悲惨な事態に陥ることは、絶対に避けなければならない。他方、青少年は、薬物に関する知識が必ずしも十分でなく、またある調査(※)によれば、覚せい剤を使用した者のうち約8割が15才から29才の間に初めて覚せい剤を使用したとしており、青少年による薬物の乱用の根絶は喫緊の課題である。

その際、児童生徒に対するこれまでの取組には一定の効果が認められることから、引き続きこれを推進するとともに、児童生徒以外の青少年に対する取組についても充実強化する。

また薬物依存・中毒者の社会復帰支援についても一層の工夫充実を図るとともに、薬物乱用は家庭内暴力を始めあらゆる点で、本人だけでなく家族を苦しめ、家庭を崩壊させることから、家族に対する支援を強化する。

(※)厚生労働省「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」(平成14年度)

薬物を取り巻く環境の改善

薬物入手の可能性等薬物を取り巻く環境は引き続き厳しい状況にあり、また密売方法もますます巧妙化・潜在化している。このため、薬物の供給源となっている薬物犯罪組織に対する多角的な対策を講ずるとともに、末端乱用者に対する厳正な取締りを実施する。また、携帯電話やインターネットの本格的普及等、時代や社会の変化に適切に対応し、さらに、MDMA等錠剤型合成麻薬や大麻、あるいはいわゆる「脱法ドラッグ」等、多様化する乱用薬物に対しても、適切に対処する。

変化する水際情勢への適切な対処

我が国で乱用されている薬物のほぼすべては海外から密輸入されたものと考えられるが、平成10年から14年までに水際で押収された覚せい剤の仕出国・地域別では、中国(香港、マカオを含む。)が全体の51%、北朝鮮が35%を占めている。

この二大ルートによる密輸の多くは洋上取引やコンテナ貨物によって海路により輸送され、その一件当たりに持ち込まれる薬物が大量であるという特徴がある。

また我が国は、34,000キロメートルにも及ぶ総延長海岸線を有することから洋上取引や地方港等をねらった密輸リスクは大きく、さらに近年は、GPSや携帯電話の普及等の通信手段の発達に伴い、ますます摘発が難しくなってきていることから、中国・北朝鮮ルート等海路による薬物の密輸入に対しより一層厳正に対処する。

3.目標に対応した指標の設定

以上のように薬物乱用問題はいまだ健全な社会生活に深刻な脅威となっているが、この問題を一刻も早く解決するためには、それぞれの目標に対応した客観的指標を設定し、それらを活用して政策の不断の見直しや改善を図ることにより、これまで以上に施策を効果的・効率的に展開していく必要がある。

また、これまでも推進本部の下に関係省庁一体となって取り組んできたところであるが、薬物乱用防止対策は関係省庁の緊密な連携が極めて重要であり、そのためには達成すべき共通の目標を定めるとともに、それらに係る客観的な指標を設定し、関係省庁が常に認識を共有することが重要である。

さらに、薬物乱用問題の解決のためには国民の理解と協力が不可欠であることから、これまでも広報啓発活動等を通じて国民の薬物根絶意識の醸成に取り組んできたところであるが、薬物乱用は潜在的に行われるため、多くの国民は乱用の実態を実感しにくい。新五か年戦略では、乱用に関する実態をできるだけ国民にも分かりやすい形で明らかにする必要がある。

以上のことから、新五か年戦略においては、それぞれの目標に関する薬物乱用の現状や国民の薬物乱用に対する意識等を表す客観的な指標をできる限り設定し、関係省庁間の認識の共有化を図るとともに、毎年度これらの指標の動向を分析すること等により、戦略をより効果的に展開することとする。

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目標1
中・高校生を中心に薬物乱用の危険性の啓発を継続するとともに、児童生徒以外の青少年に対する啓発を一層工夫充実し、青少年による薬物乱用の根絶を目指す。
  1. 学校等における薬物乱用防止に関する指導の充実
  2. 有職・無職少年に対する教育・啓発機会の確保
  3. 地域における薬物乱用防止に関する指導の充実
  4. 広報啓発活動等を通じた薬物根絶意識の醸成
  5. 関係機関等による相談体制の整備
  6. 街頭補導活動の強化とその協力体制の整備
  7. 少年の再乱用防止対策の充実強化

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目標2
薬物密売組織の壊滅を図るとともに、末端乱用者に対する取締りを徹底する。
  1. 組織犯罪対策の推進
  2. イラン人等外国人薬物密売組織壊滅に向けた徹底取締り
  3. 巧妙化する密売方法への対応
  4. 末端乱用者に対する取締りの徹底
  5. 多様化する乱用薬物への対応
  6. 正規流通の監督の徹底
  7. 関係機関の連携強化

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目標3
薬物の密輸を水際でくい止めるとともに、薬物の密造地域における対策への支援等の国際協力を推進する。
  1. 密輸等の情報収集の強化
  2. 密輸取締体制等の強化
  3. 中国・北朝鮮ルート等海路による密輸入への対応の強化
  4. 国際的な薬物の供給阻止

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目標4
薬物依存・中毒者の治療、社会復帰の支援によって再乱用を防止するとともに、薬物依存・中毒者の家族への支援を充実する。
  1. 薬物依存・中毒者に対する治療の充実
  2. 薬物依存・中毒者の社会復帰の支援
  3. 治療、社会復帰支援のための関係機関の連携の強化
  4. 薬物依存・中毒者の家族に対する支援等

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