文章番号:30126

我が国の取組

薬物乱用防止教育の充実

文部科学省

1 現状

薬物乱用対策推進本部は、平成10年5月、戦後第3回目の覚せい剤乱用期の早期終息を図るため、供給遮断・需要削減の両面から、国内における薬物乱用対策及び国際協力を推進することを基本目標に据えた「薬物乱用防止五か年戦略」(以下「旧五か年戦略」という。)を策定した。そこでは、この基本目標を具体化するため、「青少年対策」、「密売対策」、「水際対策・国際協力」、「再乱用防止対策」の四つの目標を掲げ、総合的な戦略の下に関係省庁が連携して一層の対策強化を図ることとし、それぞれについての現状と問題点及び対策を示してきた。

旧五か年戦略が策定された平成10年から今日までの間、新学習指導要領に基づく小学校での薬物乱用防止に関する指導や組織的犯罪処罰法や通信傍受法等の関係法令の整備等、新たな対策を講ずるとともに、中学校及び高等学校における薬物乱用防止教育の充実、麻薬特例法の積極的な活用、コントロールド・デリバリーの効果的な実施、国内外の関係機関との連携・情報交換の促進、薬物依存・中毒者の治療・社会復帰支援等、様々な対策を行ってきた。また、国際協力としては、資金協力、技術協力、国際会議の主催等を通じて国際社会においてイニシアチブを発揮してきた。

これらの戦略に基づく諸施策により、今次の乱用期の重要な課題の一つである青少年を中心とした薬物乱用の拡大については、児童生徒の薬物に対する意識が全般的に改善されつつあることがうかがわれるとともに、青少年の覚せい剤事犯検挙人員が戦略策定以降減少傾向にあるなど、一定の歯止めがかかったと認められる。しかしながら、青少年、特に中、高校生の覚せい剤事犯検挙人員は依然として高い水準にあり、また、薬物の入手可能性等の社会環境は改善されておらず、依然として厳しい情勢にある。

他方、薬物密売組織については、関係機関等が連携した取締り等により、暴力団やイラン人等外国人薬物密売組織に対し人的・資金的な面から打撃を与えたものの、依然としてこれらの組織が中核的存在となっており、また密売方法も巧妙化・潜在化の度合いを強めている。

また、この5年間で、それ以前の5年間の3倍以上の覚せい剤を押収したが、覚せい剤密輸ルートは根絶されていないことから、依然として相当量の覚せい剤が我が国に流入しているとみられる。さらに、近年では、大麻やMDMA(通称エクスタシー)等錠剤型合成麻薬の押収量が急増しており、これらの薬物の乱用がますます深刻化しているのではないかとの懸念が増大している。

一方、国際情勢については、ミャンマー、ラオスにおけるケシ栽培面積は減少しているものの、「黄金の三角地帯」周辺国(ミャンマー、タイ、ラオス、中国、カンボジア、ベトナム)における覚せい剤不正取引は増加しており、世界的な薬物乱用状況は続いている。

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2 政府における取組

薬物乱用防止新五か年戦略の策定

以上の状況を踏まえると、現在においても依然として第三次覚せい剤乱用期が継続していると認識せざるを得ず、薬物乱用対策推進本部は、第三次覚せい剤乱用期の一刻も早い終息に向けて、ここに新たな五か年戦略(以下「新五か年戦略」という。)を策定し、関係省庁の一層緊密な連携の下、引き続き総合的に対策を講ずるとともに、併せて世界的な薬物乱用問題の解決に積極的に貢献する。

新五か年戦略の策定は、旧五か年戦略において残された課題の解決を図るとともに、近年の状況の変化や旧五か年戦略のフォローアップ結果を的確に反映し、特に次のような視点に留意する。

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3 学校や地域社会における薬物乱用防止教育の充実

青少年による薬物乱用を防止するためには、学校や地域等における教育・啓発を積極的に行い、青少年の意識の向上を図り、薬物に手を出させない社会を目指す必要がある。また、薬物乱用少年等の早期発見や補導体制を整備するなど薬物乱用の拡大を阻止する必要がある。

平成12年度に実施した「児童生徒の薬物等に対する意識等調査」(文部科学省)によれば、平成9年度の調査と比較して、薬物について学んだ方法が「学校の授業」と答えた児童生徒が増加し、薬物に対する有害性・危険性の認識が総じて高まる傾向にあるなど、児童生徒の薬物に対する意識が全般的に改善されつつあることがうかがわれる。また、少年の覚せい剤事犯検挙人員が減少傾向にあるなど、児童生徒の薬物乱用に一定の歯止めがかかったと認められる。

しかしながら、青少年、特に中・高校生の覚せい剤事犯検挙人員は、依然として高い水準にあり、極めて深刻で憂慮すべき事態にある。また、「薬物乱用に関する全国中学生意識・実態調査」(厚生労働省)によれば、大麻、覚せい剤の入手可能性について、「簡単に手に入る」又は「少々苦労するが、なんとか手に入る」と答えた者の割合が増加するなど、薬物の入手可能性等の社会環境は改善されておらず、薬物について青少年を取り巻く環境は依然として厳しい情勢にある。

このような状況を踏まえ、今後も関係機関が連携して、薬物乱用防止の教育・啓発を一層推進する必要がある。その際、児童生徒に対するこれまでの取組には一定の効果が認められることから、引き続き、学校における薬物乱用防止教室の開催を推進するとともに、教員の効果的な研修の機会の拡充や、児童生徒用教材、教師用指導資料等について、効果的な指導を行う観点から一層の充実を図ること等が必要である。

また、少年の覚せい剤事犯の検挙人員の大半を占める児童生徒以外の少年(有職・無職少年)に対する啓発も充実させる必要がある。さらに、学校の場のみならず、家庭を含めた地域社会の場において薬物乱用防止教育の機会の充実を図り、地域レベルでの予防啓発の推進を図る必要がある。

広報啓発活動については、政府全体で様々な媒体により多様な活動を推進してきたところであるが、今後とも、薬物乱用防止等についての国民の理解を更に深めてもらうための効果的な広報の在り方について検討しつつ、広報啓発活動の一層の充実に努める必要がある。

青少年の薬物乱用を防止するには、これら啓発活動の充実とともに、薬物を所持している少年や薬物乱用事犯に巻き込まれるおそれのある少年を早期に発見することが重要である。このため、相談活動、街頭補導活動、福祉犯の取締り等あらゆる機会を通じて薬物乱用少年や薬物を乱用するおそれのある少年の早期発見・補導に努める必要がある。その際、相談体制については、地域住民の相談に的確に対応していくため、相談窓口の周知による相談機関の積極的な活用等により体制の充実を図っていく必要がある。

さらに、青少年の再乱用防止対策が必要であり、依然として多数存在する薬物依存の程度が進んだ保護観察対象少年の更生に資するため、薬物事犯対象者に対する一層効果的な処遇技法について調査研究を進めていく必要がある。

こうした観点から以下の諸対策を講ずることとするが、大麻、MDMA等新たな薬物乱用拡大も懸念されることから、未然に乱用拡大を防止するために、今後も関係機関、団体と一層連携を深めることとする。

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4 教育課程の改善

平成14年度から実施している学習指導要領において、新たに小学校の教科「体育」においても薬物乱用防止に関する指導を行うことを明記するとともに、中学校及び高等学校においてもその指導内容を充実。

学校等における薬物乱用防止に関する指導の充実

学校教育において、児童生徒が薬物乱用の誘惑に影響されることなく、的確な思考・判断に基づいて適切な意志決定を行い、自らの健康の管理や健康的な生活行動の選択及び健康的な社会環境づくりが実践できるような資質や能力、実践力の基礎を育成することは極めて重要である。

そのため、学校においては、自らの健康の保持増進の基礎を培うなどの観点から、児童生徒の発育発達段階に応じ、「体育」、「保健体育」、「道徳」、「特別活動」等を中心に学校の教育活動全体を通じて薬物乱用防止について指導してきたところである。

また、すべての中学校及び高等学校において年に1回は薬物乱用防止教室を開催するよう努めるとともに、地域の実情に応じて小学校においても薬物乱用防止教室の開催を推進するよう指導してきたところであり、警察職員、麻薬取締官OB、学校薬剤師等の協力を得て、その指導の充実を図ってきたところである。

さらに、児童生徒に薬物の有害性・危険性等の正しい知識を習得させるための児童生徒用教材及び教師用指導資料を作成、配布してきたところである。

これらの取組の結果、近年の児童生徒の薬物に対する意識については、薬物乱用やその健康影響に関する情報源が「学校の授業」と答えた割合が増加するとともに、薬物乱用防止に関する正しい知識の普及啓発が進んできており、児童生徒の薬物乱用に一定の歯止めがかかったと認められる。

しかしながら、青少年、特に中・高校生の覚せい剤事犯検挙人員は、依然として高い水準にあるなど、予断を許さない状況であり、薬物について青少年を取り巻く環境は依然として厳しい情勢にある。

このような状況を踏まえ、「体育」、「保健体育」、「道徳」、「特別活動」における指導に加え、「総合的な学習の時間」の例示として示されている「健康」に関する横断的・総合的な課題についての学習活動等も活用しながら、学校の教育活動全体を通じて薬物乱用防止について指導の充実を図るとともに、教育相談等の生徒指導の機能を一層活用する必要がある。また引き続き、学校における薬物乱用防止教室の開催を推進するとともに、関係機関の連携により薬物乱用防止教育の一層の充実に努める必要がある。さらに、国、都道府県等において開催する研修会の充実等教員や薬物乱用防止教室の指導者に対する効果的な研修の機会を拡充するとともに、指導に当たって児童生徒に薬物の有害性・危険性を分かりやすく、かつ、正しく理解させるため、児童生徒用教材及び教師用指導資料の充実を図ることが重要である。これらの教材等については、活用の促進を図るための周知に努めるとともに教材等の使用について関係機関との連携の充実を図る必要がある。

また、家庭、地域社会が一体となって学校の取組を充実させるため、各教育委員会において学校への支援体制の強化・充実を図るとともに、PTA等関係団体が積極的な役割を果たすよう協力を要請する。

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5 文部科学省の施策(平成16年度)

  1. 薬物乱用防止教室の推進

    教師のみならず警察職員や麻薬取締官OB等の専門家が一体となって指導する薬物乱用防止教室を全ての高等学校及び中学校において年1回は開催するよう指導。また、薬物乱用防止教室の外部講師に対する講習会を開催。

  2. 教材の作成・配付等
    1. 薬物乱用防止教育教材の作成・配布
      1. ①小学生用ポスター及びパネルの作成・配布(平成11年度~)
      2. ②小学生用パンフレットの作成・配付(平成13年度~)
      3. ③中学生・高校生用パンフレットの作成・配布(平成9年度~)
      4. ④高校生用教材ソフトの作成・配付(平成13年度)
    2. 薬物乱用防止教育指導者用ビデオの作成・配布(平成12年度)
    3. 薬物乱用防止教室推進ビデオの作成(平成14年度)

      薬物乱用防止教室を開催するにあたり、外部講師に児童生徒の発育発達段階に配慮した適切な指導方法等についてビデオを作成し、各学校に配布。

  3. 研修会の開催等
    1. 研修会の開催(平成9年度~)
      教員等を対象に薬物乱用防止教育について理解を深めるために研修会を企画。
    2. シンポジウムの開催(平成11年度~)
      薬物乱用防止教育シンポジウムを開催し、薬物乱用防止教育について啓発。
    3. 薬物乱用防止支援体制整備・活用モデル推進地域事業(平成10年度~)
      薬物乱用防止教育に対する支援の在り方についての実践的な調査研究を実施。
    4. 広報啓発活動の推進(平成11年度~)
      競技場等の大型カラーディスプレイシステムを活用した広報啓発活動を実施。

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