文章番号:30195

Q&A

2. 薬物乱用防止教育の必要性について

  1. 薬物乱用の現状は、どのようになっていますか。

    青少年の薬物乱用の経験や意識などについては資料が少ないのですが、大規模に行われたいくつかの調査結果 があります。例えば、青少年の薬物乱用に関する全国規模の実態調査として、2000年に文部科学省(1997年調査は文部省)が小学校高学年・中学生・高校生約73,000人(1997年調査は78,000人)を対象として実施した知識や意識に関する調査、和田による中学生約72,000人を対象とした知識・態度・行動に関する調査(2002年)が挙げられます。また全国規模ではありませんが、野津により、高校生約7,000人を対象とした誘われた経験や誘いを断わることへの効力感等に関する全県的な調査(1998年)が行われています。

    それらによれば、(1)高率とは言えないまでも薬物乱用の経験者が存在すること、(2)各薬物の乱用には強い関連性が見られること、(3)薬物が青少年にとって想像以上に身近な存在である一方、薬物乱用への対処能力は十分とは言えないことなどが見えてきます。

    すなわち、中学生では、有機溶剤乱用の経験率は男子:1.7%、女子:0.9%、覚せい剤の経験率は男子:0.7%、女子:0.3%、大麻の経験率は男子:0.9%、女子:0.5%でした。(覚せい剤と大麻については、経験者より無回答者の数が多く、実態としてはさらに高率である可能性が指摘されています。)また、有機溶剤乱用経験者は、未経験者に比べて、喫煙・仲間との飲酒・覚せい剤乱用・大麻乱用の経験率が数倍~数十倍の高い値を示しました。また、有機溶剤乱用に誘われた経験は、中学生では男子:2.5%、女子:0.9%、高校生では、男子:5.1%、女子:1.6%であり、覚せい剤や大麻についても、高校生では有機溶剤の場合と近い値となり、薬物が疎遠な存在ではないことがわかります。一方、薬物乱用を迫られた場合の対処については、高校生の10%弱は断ることが「できない」や「(断れるか否か)どちらともいえない」としています。また、中学期以降は、10~25%が薬物について「気持ちよくなれる」とのイメージを持っており、薬物乱用についても高校男子の15%程度は「個人の自由である」と考えていました。よって、対処能力が十分とは言えない状況にあることは明らかです。

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  2. 薬物乱用防止の指導が、かえって薬物乱用の関心や興味を助長させ、乱用を誘発させることになりませんか。

    近年は社会規範の低下、薬物供給の増加や入手経路の多様化、携帯電話やインターネットの普及など社会的環境の変化と、現代社会における慢性的なストレスや疲労から、それまで普通に生活をしていた大人や青少年が薬物の乱用者になるというケースが急増しています。こうした状況は薬物乱用が一般の児童生徒にも及ぶ危険性を大きくしています。さらに各種調査によると薬物乱用に関する子どもたちの対処能力は十分とはいえません。

    したがって、薬物乱用者やその恐れがある児童生徒を対象にした個別の指導だけでなく、すべての児童生徒に、薬物に関する正しい知識と薬物乱用の健康影響や社会に及ぼす影響、さらに乱用を促す諸要因への対処について教育する必要があります。

    薬物乱用防止教育の実施に当たって特に留意すべき事項は、(1)発達段階を考慮した適切な教材を使用すること、(2)薬物乱用をセンセーショナルに扱わないこと、(3)薬物乱用はすべてだれにとっても有害であるということです。

    なお、薬物乱用防止教育の評価研究の結果では,適切な教育プログラムの実践は乱用防止に効果があることが実証されています。

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  3. 小学生に対して、なぜ薬物乱用防止に関する指導が必要なのですか。

    我が国でも、平成9年と11年には小学生が覚せい剤取締法違反で補導された事件がありました。

    心身共に発育発達途上にある低年齢の子どもが、依存性のある薬物を一度乱用し始めると止めさせることが非常に困難で、健康や人格形成上も極めて重大な影響を受けます。

    また各種調査結果からは、薬物乱用へのゲートウェイ(入り口)となる喫煙や飲酒が低年齢化していることが指摘されています。

    したがって、平成14年度から実施されている学習指導要領では、小学校高学年から喫煙、飲酒、薬物乱用防止教育を実施することになっています。薬物乱用防止教育は喫煙、飲酒防止教育と学習のパターンが類似(開始の心理社会的要因やその対処法に関する学習)しており、共通する内容も含まれていますので、関連づけて効果的な指導を行ってください。

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  4. 児童生徒のモラルの向上や倫理観を高めることまでできるのでしょうか。

    薬物乱用防止教育では、薬物乱用にかかわる科学的な理解(有害性や乱用を促す心理社会的要因に関する学習)、薬物乱用をしない価値観やモラルの形成、乱用を促す心理社会的要因への対処能力の形成などを通じて、薬物を乱用しない意志を持ち薬物乱用を避ける行動がとれるようにすることが目標と考えられます。したがって、薬物乱用防止教育により薬物乱用に関するモラルや倫理観、価値観などを高める努力は必要です。ただし、年間1~2時間程度の薬物乱用防止教育で子どものモラルや倫理観を高めるのは困難です。学校における教育活動全体、家庭や地域における様々な教育・指導・キャンペーンなどを通じて行うべきであることは言うまでもありません。

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  5. 現在は、非行や不登校・いじめ問題等の緊急な課題が山積みしています。
    これらの問題が解決してから取り組もうと思いますが。

    学校現場の課題解決については、定期的に目標の明確化と諸々の状況の整理を行い、単独で最優先させるものや総合的に取り組みを行うものなど、解決に向けて各学校が的確に判断し実施することが大切です。

    ところで、薬物乱用の問題は顕在化した場合に極めて重大な結果を招くものです。

    そこで、学校でも、近年の青少年による薬物乱用が急増している事実を深刻に受け止め、危機的な状況を作り出さないためにも薬物乱用防止教育の充実を緊急課題の一つとして位置づけ、積極的に総合的な取り組みを実施する必要があると考えられます。

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